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ハロプロおたくの書き散らし雑記ブログ。

きれいはきたない きたないはきれい --ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』を見てきた

友人に誘ってもらって、東京国際フォーラムで上演されたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』を見に行ってきました!
幸い2回分チケットが取れたので、古川ロミオ×生田ジュリエット、大野ロミオ×葵ジュリエットの回に入りました。木下ジュリエットが見られないのは少々心残りですが。

まず思ったのは、このミュージカルはとにかく情報量が多い!
2回見に行ってやっとロミオは苦悩していたんだなとか、ここの歌詞はこういうことを歌っているんだなっているのがわかった。
散漫に見ていたわけではないと思うんだけど、ダンスに集中してみていると歌の歌詞が頭に入ってこないし、かといって歌に集中していると舞台の端っこの方で起こっていることにまで注意が向けられない。
一度にたくさんの情報を処理するのは無茶なんだなとつくづく思いました。
だからこそ2回観に行った意味はたくさんあるなと思っていて、2回目のこれはこういうことだったんだな!という驚きといったら。

このミュージカルは『死』の存在がとても印象的でした。
第一幕でロミオとジュリエットが結婚式を挙げるラストのシーンで、死が十字架の上にいるんですよね。最初は半身だったのが、そのうち身を乗り出して真ん中に来る。背後の映像は青空から禍々しい赤色にいつのまにか変わっている。
ロミオとジュリエットの二人は完全に死の影の上に立ち、誓いを交わす。死は二人の真ん中にいる。まさに『死が二人を分かつまで』の図式なんですよね。これからの展開を示唆するような、一幕のラストにしてとても印象的なシーン。

そもそもこの劇は死の舞踊から始まる。だから最初に出てくるキャラクターが何なのか認識していれば、幕が開いた時点でこの話やキャラクターたちの運命が死に向かうことは理解できてしまう。(私は初見でネタバレも一切見ないで行ったので、あの黒いマントの人が『死』だと理解したのは2回目の時ですが……)
緻密に練られた、よくできた演出だよな〜と思います。いつのまにかそこかしこのシーンで佇んでいる死。全編を通してこの物語に漂う死の気配がこれでもかというほど表現されている。

最後の霊廟のシーンで、死は十字架に磔にされたイエスの頬を撫で、一瞬だけなんとも扇情的というか蠱惑的というか、そんな笑みを浮かべる。
そして死は音楽の終わりとともに生き絶え、劇は終幕を迎える。大貫さんの表現が非常に美しいんですよね……。

ところで、この話を完全に理解するのはけっこう難しいんじゃないかと思っていて。
たぶん、日本人、というかキリスト教圏以外の人にはわからない(汲み取れない)ニュアンスのようなものは存在しているのでは。

たとえば、ラストでロミオとジュリエットはあの世で結ばれるのよ、みたいなことを誰かが言っています。(キャピュレット夫人だったかな)
だからなんとなく悲劇だけど救いはあるような印象のエンドになってますよね。

でも、それってほんとに結ばれてるのか疑問だなー、とも思っていて。
残された人たちからしたら、ロミオとジュリエットがあの世で結ばれたって信じないと悲しくて無理だし報われないし、っていう想いはもちろんあるからああいう発言になるのだとしても。

キリスト教圏では自殺はそもそも「殺人」の罪なわけで、最後の審判すら受けられないのでは?という疑問があって。もしそうであるなら、二人はあの世ですら結ばれることは叶わなかったのかもしれない。
ロミオとジュリエットが死んでしまったこと、そして死んでなおあの世で結ばれることも叶わない。その二つをひっくるめて『悲劇』なのかな、とも思う。

曾根崎心中におけるお初と徳兵衛とか、東洋的な考えのもとに書かれた話ならばあの世で結ばれて輪廻転生ののち生まれ変わるだろうっていうのはあるんですけどね。
キリスト教はまた別の考え方なんじゃないかなあ。

キリスト教圏における自殺についても、調べてみた感じ諸説あるからどうなんだろうなー。

私はこの話における死は『二人を分かつもの』だと解釈しているんですけど、舞台の最後で生き絶えますよね。てことは、ある意味では『二人を分かつもの』が『無くなった』ともとれるわけで、それでいくと分かつものがなくなったから二人はあの世で結ばれたのかな?って考え方もできなくはない。
どっちなんだろうなー。信じたい方を信じるのであの世で結ばれててほしいなーと思っています。(希望)
どちらにせよ、ヴェローナの街が明るい方向へ向かうことを祈りたい感じですね。

こうやって死の解釈ひとつとっても東洋世界と西洋世界には大きな違いがあるし、そういうのを掘り起こしていくともっとたくさんあるんだろうな。
で、掘り起こせば起こすほど絵画や演劇、音楽なんかを鑑賞したときに情報の解像度が上がるだろうとも思う。
そもそもシェイクスピアが西洋文化における教養のベースになっているし。
西洋の芸術を本当に理解するのであれば、古代ローマ・ギリシア史、ギリシア神話、旧約聖書あたりは基礎知識(ベース)として必須履修科目だと思うんですよ。
でも、あまりに範囲が膨大すぎてそれを履修しようとするとどこから手をつけていいかわからなくてオウッフ…ってなっちゃうんですよね。 あ〜〜まだまだ勉強が足りないし、面白い分野がいっぱいだな〜〜と思うと楽しいですね!

ロミオとジュリエットはまだ名古屋と大阪公演が控えているので、もし行こうかどうしようか迷ってる人は是非行ってください!
え〜〜ロミオとジュリエットとかベタベタの古典だし今更〜〜?って思う人もいるかもしれないけど!
数百年語り継がれて残ってきた物語だからこそ、普遍性があって強く人の心を打つっていうのを証明している舞台なのでほんと観に行ってほしい!!

ティボルトのこととかロミオのこととか、まだ書きたいことあるのでそのうち追記するか別記事で書きます〜。 ではでは。

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